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スマホ最適化で終わっていないか?施策をやりきっているか?オイシックスCMO西井氏が語るWebマーケティングの真髄

2000年代後半に突如として現れたスマートフォン。ユーザーのネット接触時間を最大まで拡張させた魔法のような新しいデバイスの登場は、世間の人の生活を大きく変貌させました。

移動時間でのブラウジングはもちろん、ニュースアプリで情報を消費し、暇があればゲームを楽しむ。スマートフォンの登場によって、各企業のマーケティングも大きく変化し、成功した企業は莫大な利益を得たとも言えるでしょう。

さて、あなたの会社はいかがですか?「スマホファースト」というキーワードがささやかれて、はや数年。スマホ最適化ではなく、しっかりとスマホファーストの施策がとれていますか?

今回、Kaizenブログで取り上げるのはスマホファーストに成功しているオイシックス社。スマホでの購入比率を向上させ、かつ単価が下がりがちなスマホによる購入単価の低下を抑制するなど、確かな成果を残しています。それをリードするのが同社CMOの西井敏恭氏。スマートフォンにおけるマーケティングの考え方はもちろん、Webマーケティングにおける本質まで深く語っていただきました。

スマホファーストではなく、“スマホオンリー”ぐらい振り切った施策を講じた方がいい。

– 世間はどこもかしこも、「スマホファーストだ!」と言われていますが、様々な会社のマーケティングに顔を出している西井さんの目にはどう映っていますか?

西井:ここ数年、「スマホだ、スマホだ」と言われつつも、それに完璧に対応している会社はまだまだ既存業態ではすごく少ないですね。

少ないというか、「スマホで見られるようにしました」とか、「スマホやっていますよ」という話に留まっていて。これだけデバイスが劇的に変化している今、極端なことを言ってしまえば、“スマホオンリー”みたいな感じのになっちゃうかもしれないのに、対応しましただけで本当にいいのかなと。

たとえば、PUSH通知。従来、メールが主流だったマーケティングの手法が、すごく変化しています。その中で革新的と思われて広まった手法がPUSH通知でした。

– PUSH通知の場合、手法としてブームになったせいか、各社が取り入れて、結果“嫌われ者”になった感は否めないですね。

西井: そう。きっとPUSH通知のCTRとかは、多分、この1年で激減していると思うんです。だから、今の時代、PUSHが正とは言い切れない。

「PUSHがダメなら、成功事例もポツポツと出てきているLINEをやればいい!」と考えるかもしれませんが、それも違う。LINEだから上手くいくケースとそうでないケースがあることは分かりきったことです。

とにかく手法にこだわるのはダメで。ユーザーにとって心地よい体験、使いやすさを追求する、つまりユーザーのことを見つめて最適な方法を取り入れることが何より大事なのです。トレンドだからどう、というのは一度無視してもいいかと。

結構、矛盾が多いなと感じるんです。先ほども出ましたが、「スマホファースト」と言われているのに、制作会社が上げてくるデザインって、PCベースですし。「スマホのUI・UXありき」なのであれば、そっちのデザインの方が先ですよね?

メルカリ、WEARに倣う、新しい購買スタイルを提案するということ。

– 西井さんの中で、スマホにうまくシフトされている会社さんって、どこか思いつきますか。

西井:ECですか?CtoCになりますけど、やっぱりメルカリなんかはすごいですよね。

今まで、オークション系のサービスっていうとデジカメで写真を撮って、PCに取り込んでアップして…みたいな過程が必要でしたが、それがスマホのデバイス一発でいける。これは本当に革新的かと。

あと、ZOZOTOWNの「WEAR」とかも先進的な事例ですよね。例えば、今まで、PCサイトで服を買うという行動を取るときに、たくさん表示されている中から比較して買うというのが基本でした。でもこれ、あくまでPCっていう広い画面における最適な行動だと思うんです。

ところが、スマホで同じ行動を取ろうとすると、結構難しい。だからWEARみたいな、誰かがとある服を、たとえば1コートを着ていて、コートを探しているユーザーが「このコート、かっこいい!」と思わせて、そのアイテムがすぐ買える。これってつまり僕が言いたいのは、PCの体験をスマホに置き換えるのではなく、スマホならではの買い方っていうところを確立していくことが重要、ということです。

– スマホならではの心地よい体験を、事業者側で作り出してあげた結果、それが新しい購買スタイルになると。

西井:そうですね。結果、それがすごいビジネスチャンスになりますし。

メルカリの話に戻りますけど、彼らが登場し、スマホという新しいデバイスを活用して購買スタイルを提案しなかったら、きっと「ヤフオク!」の一人勝ちだったとは思うんですよ、CtoCの市場って。

仮にメルカリがWebのブラウザベースでやったのであれば、絶対戦えなかったハズです。Webってどこかが勝ったら本当、一強になっちゃう世界だから。

よく言われていることですけど、スマホが誕生したことで、みんなのネットとの接触時間が広がりました。だから、いわゆる隙間時間にいいタイミングで、ほしい情報をちゃんと提供できたら、きっとコンバージョンパワーも上がるんじゃないかと。

よく、「スマホだからCVRが悪い」という声を聞くので(笑)。以前、どこかのアンケートで、日本の10代・20代はPCの所有率が低い反面、スマホを活用した購買が多いというのも書いてありましたしね。

Oisix流、スマホファーストの施策を大公開

– 御社でそこで取り組み始めた部分、何かお話しできる範囲でありますか。

西井: 例えば、SMS(ショートメール)ですかね。

– ショートメールですか?非常に古い手法なので、意外です。

西井:これが効果あるんです。オイシックスは「定期ボックス」という、毎週定期で発送するサービスをやっています。これはお客さんが、「今週はこれ要らない」とか、「追加でこれ買おう」とかコントロールできるものなんです。

でも、仕事などで忙しい週だと、商品の出し入れを忘れちゃったりする週が発生しますよね?そういう時、つまりユーザーが定期ボックスの管理を出来ていないときに、「あと2時間で〆切ますが、大丈夫ですか?」という内容をショートメールで送るんです。

– なるほど!メールだと気付くのが遅くなりますからね。

西井:そう、メールだと気付くのが5時間後とかになります。だからショートメールで一応送って、すぐキャンセルできるようにしているんです。いらないのに送ってしまうと、ユーザーはすごい嫌な気持ちになりますから。

普段、PC使っている方でスマホが苦手という方でも、キャンセルボタン1つぐらいだったらできるじゃないですか。これって、本当にスマホができたおかげで、できるようになったのかと。つまり、スマホの特性を生かしてユーザーの体験や感情を阻害しないようにしています。

– 本当にユーザーファーストですよね、送ってお金をいただくというよりユーザーにとって迷惑をかけないという。

西井:あと、昨年ですかね、スマートフォンのUIをすごい改善して、そこはむちゃくちゃ成果が出ましたね。

ほかのEC事業者の方には参考にならないかもしれませんが野菜のECって、1回の購入で20商品ぐらい買うんですよ。トマトとジャガイモとアレとコレと…って感じで。

1回の買い物で、トマト一個だけ買うとか勿体ないし面倒くさいですよね。そこで、1週間分ぐらいのお買い物をしていただいたりするのが、うちの基本的な買い方で。

恐らくAmazonとかでまとめ買いするとき、多分、PCで行なうと思います。逆にスマホだと、下手すると1個1個をワンクリックで買うような体験になるかと。その方がラクですし。

この場合、何が起こるか?1トランザクション(取引)あたり1配送になると思うんですけど、こうすると配送コストが1トランザクション毎に発生する。だからワンクリックで購入できるUIにして、似たような時間帯に入った受注は、一つの梱包で送るように改善とかすると、会社としての利益率は上がると思います。

– つまり、会社の物流においても、“スマホ対応”するべきということですか?

西井:ええ、まさにそうです。お客さんの体験は阻害せずに、配送面をちゃんと整えることによって、会社の業績というのもちゃんと作っていくということ。つまり何が言いたいかと言うと、お客さんの行動が変わるから、会社自体もその行動に合わせて変化させなければいけないなと。

オイシックスの場合は、元々一週間に一回の注文になっているので、配送のところは上記に当てはまらないのですが、1注文あたりの単価は利益率に大きく影響します。昨年は、UIでいろいろとテストして、このような対応をしていくことによって、スマホでの購入単価をPCでの購入単価に近づけることが出来ました。550円あった単価差が320円まで縮まったとIRにも出ている(前述図参照)んで、見ていただければと思うんですけど。

何故、そのクリエイティブはハマらなかったのか?ユーザーは何を求めているのか?ただ、それを徹底するだけ。

– それでは最後に。西井さんが大事にしている、マーケティングの考えについてお聞かせください。

西井:何故、そのマーケティング施策が上手くいかなかったのかを突き詰めることです。もっと言えば、なぜそのワードだと効果が出なかったのか、も。

例えばA/Bテストの場合。Bは悪いから、A残して、Bだけやめよう…この決断が、改善の定義になってはいけないと僕は思うんです。何でBはAに負けたのか?ということをちゃんと理解していて。その要因を元に、次のラウンドで回すクリエイティブを考えない限り改善できないじゃないですか。

これはリスティングの運用においても同じです。A、B、C、Dというキーワード出して、「AとBは良くてCとDは悪かったからダメだったモノは切り捨てよう」、という運用をしている会社多くないですか?

CPCが安くなったので、そっちに寄せるという行動って、本来だったら機械がやる仕事なのに、各担当者はその運用にこだわり続けている。「どんなキーワードで検索している人が自社の会員になるか、サービスを利用してくれるか?」ということを、ちゃんと考えられる人はそんなにいないと思います、正直。

– どういうことでしょうか?

西井:例えば、オイシックスの場合、「有機野菜」ってワードじゃ、なかなかコンバージョンしないんですよ。そもそも「有機野菜」で検索した人はどんな情報を求めているのか?多種多様ですよね?

では、「育児 仕事」というキーワードで検索するユーザーにはどんな人が多いと思いますか?インサイトから考えてみてください。

– 育児と仕事を両立したいと思っているママでしょうか?

西井:そう。そんな人たちに対して、例えばオイシックスが「子供がいて忙しい人でも自宅で簡単に料理できるキットが宅配で手に入る」というコンテンツを用意すると、オイシックスのサービスを使ってみたいと感じていただけると思うんです。

要するに、検索するシーンやインサイトを考えることはもちろん、その答えとなるコンテンツまで含めた上でキーワードを設定しなければいけないと僕は思っています。

– その定性的なセンスと言ったら変ですけど、用意するコンテンツまで考えられる人間は、意外と少ないのかなと思います。

西井:もう一度言いますが、効果がいいクリエイティブに寄せるのは今後、どんどん自動で出来る仕事になると思う。僕たちマーケッターは、人にしか出来ない仕事をするべきなのです。とにかくマーケティングは徹底してやりきるだけです。リスティングにしろ、A/Bテストにしろ。

ダメだからと言ってすぐに新しい手法に手を伸ばすのではなく、とにかくユーザーのニーズに深くダイブしてやりきる。それだけです。何か派手なことを言えずにすみません(笑)。

– いえいえ(笑)。基本に徹底することがマーケティングにおける最良の方法であり近道であるということを、しっかりと感じることが出来ました。本日はお忙しい中、貴重なお話を有り難うございました。

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