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〜Kaizen Growth Drive 2016〜
「これ、どういうこと?」の中に改善のヒントがある。ヤフーのグロースハッカー&アワード受賞者が語る、活動の道程

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2016年11月10日。Kaizen Platformは企業の事業責任者やマーケティングリーダー向けのイベント「Kaizen Growth Drive 2016」を開催した。本ブログでは、イベントの内容を全3回に分けてお伝えする。

最後となる第3回目は、プロジェクトセッション「UI改善を続けると何が起きるのか? 〜ヤフーの2年にわたるしくじりと成功の道のり」。そして、Kaizen Platform プロダクトロードマップ「企業はどのように顧客体験改善に取り組むべきか?」をレポート。

登壇者の方々の言葉には、UI・UX改善の成功につながる数多くのヒントが詰まっていた。そのエッセンスを、余すところなくお届けする。

プロジェクトセッション「UI改善を続けると何が起きるのか? 〜ヤフーの2年にわたるしくじりと成功の道のり」

プロジェクトセッションでは、ヤフー株式会社のマーケティング&コミュニケーション本部 マーケティングマネジメント室グロースハックリーダーである稲垣誠司氏が登壇。同社が2年あまりにわたって続けてきた改善活動において、どのような学びや成果があったのかを振り返った。

改善活動初期においては、「短期の目標を設定すること」と「成果をアピールすること」が重要

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稲垣:ヤフーの改善活動は、大きく分けて「立ち上げ期」「活動展開期」「継続・深堀期」という3つのフェーズに分かれていました。まずは、立ち上げ期のことから話したいと思います。

ヤフーは「各サイトのランディングページが、作られた後に改善されていないことが多い」という課題を抱えていました。それを改善するため、プロジェクトを開始しメンバーを収集したんです。メンバーが各部署に声をかけ、その部署が担当するサイトのUI改善をしていくような形で活動していきました。

当初、大事にしていたことはなんでしょうか?

稲垣:「月に〇〇箇所A/Bテストをする」というように、短期の目標を設定することです。そうすることで、タスクが整理され、何から手をつけたらいいのかがクリアになりますから。

それから、「改善活動を積極的にやっていきたい」という意欲のある小さめの部署と協力し、早期に成果を出すことを優先してきました。普通であれば、規模の大きい部署と協力して改善活動をし、大きな成果を出そうとしがちです。でも、大きな組織を動かすには多大なエネルギーが必要なため、実現までに時間がかかります。

そうではなく、まずは小さくてもいいから成果を上げ、それを会議でレポートする。それを聞いた社長やマネージャーが、「どんどんやっていこうよ」と言ってくれ、会社全体を巻き込むことができたんです。

「コンバージョンレート0.8%向上」ではなく「売上100万円アップ」という報告に変更

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稲垣:次に、「活動展開期」に入ります。このころに組織変更があり、マーケティング&コミュニケーション本部が新設されました。この部署の中にグロースハックチームができ、全社展開に向けて横断的に活動を推進することになったんです。

プロジェクト単位でやっていた頃と、何か変化はありましたか?

稲垣:どういった施策を実施してどれだけの効果が出ているのか、各部署に対する情報共有が必要になってきました。それを実現するため、それぞれのページが何を目的としているかKPIを整理し、現場の担当者及び各部署のマネージャーなど関係者で共通理解し進めていったんです。

マネージャーへの成果報告を行う際に、気をつけていたことは?

稲垣:成果を「お金」で示すことです。

例えば、「A/Bテストの結果、コンバージョンレートが8%から8.8%に改善しました」と報告しても、普段コンバージョンレートという単語に触れていないマネージャーにはわかりづらい。そうでなく、「A/Bテストの結果、売上を月に100万円向上させる効果を得ました」といった感じに報告すれば、その成果が非常にイメージしやすいものとなります。

明文化・ツール化によって徹底的に属人化

稲垣:最後は、「継続・深堀期」です。

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ここでは、「引き継ぎ」という観点で話をしたいと思います。実は、「立ち上げ期」「活動展開期」「継続・深堀期」という3つのフェーズの間に、チームの担当責任者は変わり続けてきました。この図の左から3番目の人が私なんですが、実は4番目のリーダーになる人も既に決まっています。現在、業務の引き継ぎを行っているんです。

通常、リーダーが担当する業務って属人化しがちなので、引き継ぎをするのが大変なんですが、ウチのチームでは比較的上手くできています。

それは、なぜですか?

稲垣:運用ルールが明文化されていること、そして改善活動の結果をツールに集約して見える化できているからです。これによって引継ぎを省力化できるし、過去どんなことをやっていたかを理解できる状態で進められます。

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これまでの活動を振り返ると、成功の裏には数えきれないほどの工夫がありましたね。最後になりますが、2年間にわたるUI改善を続けてきた中で、ヤフーにはどのような変化があったと思いますか?

稲垣:各部署のメンバーそれぞれに、「サイト運営においては、当たり前のものとしてUI改善を続けていく必要があるんだ」という意識が醸成されてきたのが一番大きいです。個々人がきちんと目的意識を持って、自分ごととして改善活動に協力してくれるようになったと思います。

Kaizen Platform プロダクトロードマップ「企業はどのように顧客体験改善に取り組むべきか?」

Kaizen Platform プロダクトロードマップでは、Japan Growth Hacker Award 2016においてスマートフォンサイト賞を受賞した片岡彩子氏。そして、Japan Growth Hacker Awards 2015において勝率賞を受賞した井浦英太郎氏が登壇した。彼らは普段、グロースハックのスペシャリストとして、各企業へのコンサルティング業務を行っている。効果的なUI・UX改善を実現するために、どういったことを心掛けているのだろうか?その方法論を解説した。

「ん? これ、どういうことだろう?」という違和感。それが改善の手がかりになる

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改善施策を効果的に行う上で、何を大切にしていますか?まず、片岡さんからお願いします。

片岡:企業とユーザーの間にある、認識のギャップを埋めることが重要だと思います。企業が、「こういう書き方にするのが当たり前」「これくらいわかるだろう」と考えていることが、実はユーザーにとってはそうでないというケースがよくあるからです。

企業の内部にいる人たちはそのサイトの仕様に慣れてしまっているため、なかなかその違和感に気づくことができません。そこで、私たちのような外部の人間のチェックが有効になるんです。

企業の内部にいる人だと気づけないこととして、例えば何が挙げられますか?

片岡:よくあるのが、業界用語をサイト内でそのまま使っているというケースです。企業内では当たり前のように使われている用語でも、ユーザーにとっては全く当たり前ではないことは多々あります。それから、あるページへの導線が、ユーザーから全く気づいてもらえないような配置になっていることもあるんです。

使いづらい箇所を洗い出していくために、有効な手段はありますか?

片岡:私は、改善する対象のサイトを一番初めに使ったときに「ん?これ、どういうことだろう?」と感じた部分。具体的にいうと、用語の意味やサイトの使い方がわからなかった部分をメモしています。それを後から見直すことで、具体的にどう改善したらいいのか、道筋がグッと見えやすくなるからです。

不要なものを削ることで、本当に伝えたいメッセージが浮き彫りになる

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井浦さんはどんなことを大切にしていますか?

井浦:「そのサイトは最終的に何を達成したいのか」を第一に考えます。例えば、購買数をアップすることの場合もあるでしょうし、資料請求につなげることの場合もあるでしょう。その目的を達成するには、どこを改善すべきか逆算して考えていくんです。

その際には、多くの場合、申し込みフォームの項目を削除したり、ボタンを見やすくしたりといったようにデザインをシンプルにわかりやすくするのが有効になります。そうすることで、そのページが本当に伝えたいメッセージが浮き出てくるのです。

どうしても企業の内部の方は、伝えたい情報があれもこれもとたくさんあるので、1つのページに情報を詰めこみすぎてしまいます。でも、勇気を持ってそれを削らなければ、ユーザーにとって親切なものにはなりません。

「このデザインなら成果が上がるはず」という思いこみを、なくそう!

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これから改善活動に取りくむ人たちへ、何かアドバイスをお願いします。片岡さん、どうぞ。

片岡:「1回のA/Bテストで、たくさんの案を盛りこまない」というのは必ず守ってほしいです。

例えば、デザインは変えずに文言だけ変えてA/Bテストをし、それによって効果が上がったら、「文言を変えるべきなんだな」ということは明確になります。でも、デザインと文言の両方を変えてA/Bテストをし、効果が上がったとしても、いったいどちらが効いたのかはわかりませんから。

あれもこれもとやってしまいがちですが、テスト対象をきちんと絞りこむことが大事なのですね。井浦さんはどうでしょうか?

井浦:作り手の持つ「このようなデザインにしたら、成果が上がるはずだ」という思いこみをなくしてほしいと思います。それが本当に良いデザインなのかは、結局はユーザーに聞いてみないとわかりません。

私自身、「これならきっと成果が出る」と思った施策によって、逆に数字が下がってしまったという経験はいくらでもあります。専門家の持っている感覚だって、それほどあてにはなりません。だからこそ、トライアル・アンド・エラーをくり返すことで少しずつ正解に近づいていくしかないのです。

正しい答えは、ユーザーだけが知っている

全3回にわたり、「Kaizen Growth Drive 2016」の内容をお伝えしてきた本レポート。各登壇者の言葉からは、いずれもユーザー目線に立つことの重要性が、改めて浮き彫りになりました。

サービスを運営していると、運営者は愛着や想いがあるが故に、「私たちの考えているものこそ、良いデザインだ」という考えに囚われがちになります。しかし、それは多くの場合、運営者の思いこみでしかありません。

固定観念を捨て、真摯に検証を重ねて、ユーザーから教えを乞う。

その姿勢こそが、UI改善における何よりの成功への近道なのです。