Never Ending Re-InventionKaizen Platform オフィシャルブログ

〜Kaizen Growth Drive 2016〜
サービス改善のヒントは「テレビの番組表」にあった。AbemaTV成長の軌跡を、CA小池氏が振り返る

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2016年11月10日。昨年に引き続き、Kaizen Platformは企業の事業責任者やマーケティングリーダー向けのイベント「Kaizen Growth Drive 2016」を開催した。

優れたUX(User Experience:顧客体験)を提供したことにより、事業において成功を収めた企業に登壇頂き、その秘訣を伺った。本ブログでは、イベントの内容を全3回に分けてお伝えしていく。

第1回目は、基調講演「マーケティング戦略の中心に顧客体験を据えるには?〜ネット動画を受け身で見る、前例のない顧客体験を生むAbemaTVに聞く〜」をレポート。

今年4月のリリースから約7カ月でアプリダウンロード1000万を超え、急成長中のAbemaTV。チャンネル制の番組配信や、無料&会員登録不要で誰でもすぐにスタートできるプロダクトデザインが特徴だ。

同プロダクトが優れた顧客体験を生み出すまでには、どのようなプロセスをたどってきたのだろうか?株式会社サイバーエージェント常務取締役兼、株式会社AbemaTV 取締役である「小池政秀」氏。そして、Kaizen Platform, Inc. Co-Founder & CEOである「須藤憲司」をスピーカーに、成功の舞台裏を語る。

指標とするKPIを毎週見直し、合わせて部署の編成も都度、変える。全てはベストな開発体制のため

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須藤:AbemaTVでは、開発のサイクルを効率よく回すため、どのような体制を取ってきたのでしょうか?

小池:サービスを立ち上げる時期までは、各部署同士の「ヨコ」の連携はほぼ行わず、弊社代表取締役社長であり、統合プロデューサーの藤田と私によるトップダウン型の「タテ」の連携により組織を動かしてきました。藤田はサービスやコンテンツの全体設計や品質チェックを、私は組織運営やマーケティング部分を担当するような形で。トップダウン型の方が、開発の意思決定のスピードは上がりますから。

けれど、その方式だけでは上手くいかない部分も出てきますから、徐々に各部署同士の「ヨコ」の連携も行うようにシフトしてきたという感じですね。

須藤:その、「初めはトップダウンで開発をスタートした後、各部署同士の連携を再編成する」というマネジメント手法を採ることは、当初から予定していたのでしょうか?

小池:そうですね。弊社の主力事業のひとつであるAmebaでも、ブログや他のサービスを立ち上げた時に同じような仕組みを採っていました。それを踏襲したんです。

追っているKPIは部署ごとに異なっており、そのKPIが適切なものであるか毎週見直しをかけています。KPIが変更になれば、それに合わせて部署の編成も変更しているんです。

須藤:KPIを元にして、編成を柔軟に変えていくというのは相当にフレキシブルですね!

小池:課題を常に考え、どうやったら成功できるか試行錯誤しながら、現在のような形に変遷していきました。より良い開発体制を求めて、現在も組織編成をチューニングし続けています。

チャンネルごとに、ユーザーの視聴傾向は異なる。では、再び観てもらうための番組編成とは?

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小池:各チャンネルを継続的に視聴してもらうため、番組編成の戦略を考え続けています。例えば、

「7~8時の番組を観ていただいた方に、9時の番組も引き続き観ていただく」

「ある時間帯の番組を観ていただいた方に、他の曜日の同じ時間帯の番組も観ていただく」

など、視聴者に取ってもらいたい視聴パターンに応じて、編成の方法も変えていく必要があるんです。意図したパターンで視聴してもらえるよう、チャンネルごとにユーザーの動向をチェックしながら編成をブラッシュアップしています。

須藤:ちなみに、チャンネルごとにユーザーがコンテンツを視聴する時間帯の傾向は異なっているものなんでしょうか?

小池:異なっていますね。例えばドラマであれば、月9の時間帯によく視聴されているとか、土日の場合は夜がよく視聴されるけれど深夜はダメとか。これがバラエティー番組だとまた少し時間帯が変わったりもします。アニメだとより深夜帯が好まれる傾向にあります。それぞれのチャンネルごとに、どの時間帯にどういったコンテンツを置けばよいかを、日々試行錯誤しています。

配置するコンテンツの種類にも気を遣う必要があります。例えば、あるドラマを特定の時間帯で定期的に放送しているとしましょう。そのドラマが放送終了した後に、他のドラマを同じ時間帯に放送する場合には、前番組を視聴していたユーザー層に継続して楽しんでいただけるよう、同系統のドラマにするなどの工夫をしています。

もし、その時間帯に番組を視聴してくれていたユーザー層の嗜好と異なっていると、せっかく定期的に観に来てくれている人たちがまた離れてしまいます。そうなってしまうと、ユーザーの積み上げをまたゼロから作らなければいけないので、取り戻すのが大変になってしまうんです。いいかげんな番組編成をやっては絶対にダメで、地道にユーザーを積み重ねていく姿勢が求められていると思います。

良い番組編成は「テレビ」に習え!ユーザーが普段接しているものに、優れたUXのヒントはある

abematv04須藤:より良い番組編成を実現するために、チェックしているKPIや参考にしているサービスなどはありますか?

小池:KPIとしては、番組の継続視聴率やユーザーの来訪頻度などをチェックしています。その数字の変化に、ユーザーの満足度が如実に表れるんです。

それから、参考にしているのはテレビの番組表ですね。AbemaTVを運用し始めてから改めて番組表を眺めてみると、「このテレビ局は、金曜日のこの時間帯に複数の番組を連続して視聴させようとしている」という感じに、どんな意図でその構成にしているかを理解できるようになってきたんです。そこで得た知識を、自分たちの番組編成に反映させていきました。

須藤:それは興味深いですね!実は、普段ユーザーの身の回りにあるものに、良いUXのヒントは埋まっているのでしょうか?

小池:そう思います。コンテンツだけでなく、アプリの仕様に関しても同様です。AbemaTVにおいては、プッシュ通知の配信方法や、リテンション(既存顧客維持)の方法なども、これまでに流行した様々なアプリを参考にしています。

新しいサービスをリリースし、ユーザーに浸透させていく過程においては、その内容がユーザーにとって快適なものとなるようチューニングが必要です。その際に、既存のサービスで優れたUXを実現しているものは大いに参考になります。

「コンテンツ×サービス」がシームレスに結びつき、新しいUXが生まれる

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須藤:AbemaTVを運用する過程において、どのような学びを得ましたか?

小池:これまで私たちは、これほどにコンテンツとサービスがシームレスに結びつくプロダクトを作ってはきませんでした。Amebaブログに代表されるように、コンテンツ自体はユーザーに作成してもらうものが多かったのです。コンテンツをどう表現し、どうユーザーに届けるかということをこれほど考えたのは今回が初めてでした。AbemaTVを運営していく過程で、そのノウハウが徐々に身についてきたのは大きいと思います。

須藤:コンテンツとサービスがきちんとかみ合っているからこそ、ユーザーの高い満足度に繋がるのでしょうね。

小池:その通りです。満足度を高めるためには、総合的な価値を提供する必要があります。コンテンツだけが良くてもダメですし、システム面やその他の要素も同様です。全てが上手にかみ合わないと成立しないのだと強く感じました。それらのトータルマネジメントを行うことで、良い顧客体験が実現できると学びました。

「総合的な体験」の品質向上が、優れたUXを実現するカギとなる

KPIを元にしたフレキシブルな組織編成と、ユーザーに再び視聴してもらうための番組編成。それらを絶え間なく改善し続けることで、AbemaTVはユーザー満足度の高いプロダクトを実現していました。

コンテンツだけでも、サービスだけでもなく、それらが融合した「総合的な体験」の品質をどう向上させるかを考える。それこそが、優れたUXのカギなのでしょう。

「Kaizen Growth Drive 2016」の内容をお伝えしてきた本レポート。次回の第2回では、パネルディスカッション「UI改善は劇的な成果、変化を生み出すのか? 〜業界リーダーによる事例パネルディスカッション」をお送りします!