Never Ending Re-InventionKaizen Platform オフィシャルブログ

説明はいらない。どんな「想い」で使われているか、ストーリーを語れ。サイボウズLiveの成功に見るプロダクトマネージャーの役割

「サイボウズLive」の現プロダクトマネージャー大槻氏[左]
元プロダクトマネージャーの丹野氏[右](現在、株式会社ビズリーチ在籍)

 

世界中の誰もが認める高い技術力と伝統を持つ日本の「ものづくり」しかし、今、日本の「ものづくり」は輝いているだろうか。

今までは、こんな機能がついて良いものだって言えばみんなすごいと賛同し、こぞって欲しいと手を伸ばしていた。しかし、「良いもの」をつくることが当たり前となった今の時代。良いものをつくるだけでは、誰も振り向かない。

愛される製品にするためには、誰にどんなシーンで使えるのかアプローチする方法を予め組み込んでおく必要がある。そう、プロダクトとプロモーションを両輪のものに。

今回、取り上げるプロダクトは、ローンチから5年という期間で100万人のユーザーを獲得した「サイボウズLive」。プロダクト誕生のきっかけ、そして「愛される」商品へと育んでいった過程を立ち上げに関わった新旧プロダクトマネージャー、丹野瑞紀氏と大槻幸夫氏に訊いた。

SNS馬鹿の丹野氏×革新を訴え続けた大槻氏=最強のチームが生まれる。

— 今日はお忙しい中、お時間を頂き有り難うございます!丹野さん、サイボウズが移転してから初の訪問ですか?もはや古巣の面影はないのでは?

丹野:いやぁ、すごいですね。大槻さん、すっかり有名人になりましたし(笑)。

大槻:いやいや、やめてくださいよ!

— (笑)早速ですが、サイボウズLiveの誕生の瞬間にお二人は立ち会ったと思うのですが。そもそも何故、このプロダクトをつくろうと思ったのですか?

丹野:当時、サイボウズの看板商品であるサイボウズ Officeの新しいユーザー層をどう獲得するか、という課題がありました。当初はサイボウズ Officeを無料配布しようという案もあったのですが、単に無料にしただけでは新しいユーザー層の獲得にはつながりません。だから新しい何かをつくらなければと。

じゃあ、そこにSNSの要素を取り入れると新しい層を開拓できるのではないかと仮説を立てていて。当時、mixiが全盛でしたが、mixiのような構造のグループウェアがあれば、社内外を問わずプロジェクトチームの情報共有に役立つんじゃないかと。これまでのグループウェアは階層型の組織を前提としていましたので、プロジェクト型の組織で使いやすい情報共有ツールを作りたいと思ったんです。

「人が人を連れてくる」というSNSの構造をプロダクトに内在させることでマーケティングコストを抑えてユーザーを獲得できるのでは、という狙いもありました。なんでもSNSで解決しようとするので社内では「SNS馬鹿」っていわれてました(笑)

— 一方で大槻さんはどんな経緯で開発チームに加わったんですか?

大槻:元はサイボウズ OfficeやGaroonなど既存製品のプロモーションを担当してました。

丹野:大槻さんは「サイボウズにはこんな課題がある」って常々発信していて、それでちょっと煙たがられたいたことも(笑)

大槻:そうなんです(笑)。Twitterで検索してサイボウズへの不満が書いてあるのを片っ端からコピぺして社内でリンクを貼りまくってました。それで上司に「大槻さんにやって欲しいのはこういうことじゃ無いんだよ」と言われたり(笑)。

「ユーザーはこんなこと思っているのに」とか「今はこんなトレンドがあるのに」って一人で悶々としていたので、リアルな声を発信し続けていた時に、丹野さんからお声をかけていただいたんです。

— 丹野さんから大槻さんに一緒にやろうよ、と指名したんですね。

丹野:「好きに人選していいですよ」と言われて大槻さんの名前を出したので、まぁ指名したわけですね(笑)

大槻さんは当時から新しいことに挑戦したいという想いが強い方で、その部分で意気投合したんです。

スタートアップに失うものはない。お客さんを獲得するだけ。いろんな可能性が楽しかった。

— 社内版mixiのアイデアと仮説を最初からお持ちだったということですが、具体的にはどんな課題や想いがあったんですか?

丹野:チームで情報を共有する際に複数のツールをうまく組み合わせるのが大変だな、という課題がありました。

Google Appsや、Dropboxなどの無料のサービスはありましたし、複数のサービスを組み合わせれば情報共有は可能でした。でも社内外問わず、様々なシーンで「うちのチームはうまく使いこなせていないんだよね」という声が聞かれました。チームリーダーのリテラシーは高くても、メンバーのリテラシーが高くないと、複数のツールを組み合わせて活用するのって難しいんですよね。情報共有ツールってチームメンバー全員が使いこなせないと意味がないんです。

そこで、「1つのツールを見ているだけで情報共有を完結させられる」というシンプルで簡単なものを作ろうと思いました。

ターゲットは誰でどんな課題を持っているのかを考えて、派手なことはせずひたすらPDCAを繰り返しました。特に奇をてらうようなことはやらず、3Cや4Pの分析を忠実に。競合をベンチマークして競合より機能を強化しようという発想ではなく、既存のサービスが解決できていない課題を解決しよう、という考え方でした。

— ちなみに、大槻さんはマーケティング担当として、具体的にどんな施策を講じたんですか?

大槻:いろんな可能性を探っていました。

いわば社内スタートアップだったので、失うものは何もない状態です。お客さんを獲得するために何ができるかを考えていました。

当時はTwitterやU-streamなどのサービスが始まった時期で、これらをうまく使ってみようと。例えば、USTREAMを使って丹野さんと2人で深夜ラジオみたいなこともやりました(笑)。「えー、今夜サイボウズLiveがメンテナンスに入ります」とか、アップデート内容を放送したり(笑)。楽しかったですね。

丹野:多い時で100人くらいの方が見にきてくださいましたね。ファンとの貴重な交流の場でした。

「機能」の説明はしない。どんな「想い」で使われているのか、そのストーリーを語る。

— プロモーションはどのように進めましたか?それから、「ここはこだわったな」という点を教えて下さい。

丹野:ローンチの発表は渋谷の映画館を借りて、サイボウズとして初めて劇場型のプレスイベントをやりました。大槻さんたちの奮闘もあってすごくインパクトのあるイベントになりましたね。

コンテンツマーケティングの走りみたいなこともやりましたよ。サイボウズLiveを活用してくださっている方にインタビューして記事化するんです。その時にサイボウズLiveの活用方法よりも、ユーザーの方のプロジェクトや活動にフォーカスしました。「どんな想いで使っていますか?」というストーリーを語るような伝え方です。「なぜこのプロジェクトに取り組むのか」という点にフォーカスすることで、読み手の共感を得てソーシャルシェアを獲得したんです。

大槻:とはいえ、サイボウズでは企画の段階から「いかに目立たせるか」のマインドを持たせるDNAがあります。特にベンチャーの場合は目立たなければ存在しないのと同じですから、「いかに目立つか」を常に考えていました。

先駆者たる二人が語るプロダクトマネージャーの未来

— 今、お二人の活躍もあってか、プロダクトマネージャーという職種が注目を浴びています。パイオニア的存在のお二人から見て、どんな人がプロダクトマネージャーに向いていると思いますか?

丹野:いやいやパイオニアなんてとんでもない。プロダクトマネージャーという名前ではなくてもその役割を担っている方はたくさんいます。

最近プロダクトマネージャーが注目を集めているのは、プロダクトを作るのもビジネスをスタートするのも昔と比べて簡単になったからじゃないでしょうか。でもとりあえず作って出すだけだと、なかなかうまくいかない。顧客に愛されるプロダクトを作り、常に改善のサイクルを回す役割として、プロダクトマネージャーの必要性が認識され始めているんだと思います。

その意味では、顧客の課題をいかにして解決するか、という「Problem Solution Fitのマインド」を持っている方はプロダクトマネージャーに向いていると思います。

大槻:プロダクトマネージャーは、プロダクトとマーケティングを融合させるのが最も重要な役割です。それともう一つ、「僕らが仕事してる意味って何?」、と絶えずメンバーの心に火をつけるのもプロダクトマネージャーの重要な役割だと思います。

みんなをワクワクさせられる方もプロダクトマネージャーに向いていると思います。

— 最後に、いちばん難しい質問をさせていただきますね。ずばり、「プロダクトマネージャーの仕事とは?」

丹野・大槻:うわー、難しいですね・・・(同じ方向を向いて考えに耽る二人)

丹野:はい、では僕から。

「顧客の課題解決を絶対に諦めないこと」です。改善のPDCAを偏りなく繰り返すことが重要です。常にユーザーのことを考え、プロダクトが愛されるように工夫を凝らし続けることが大切な仕事だと思います。

大槻:サイボウズのメンバーは皆、優秀です。だからこそ、なぜこの問題解決に取り組むのかというビジョンの提示が重要です。ビジョンを示し、メンバーやステークホルダーに情熱を持って仕事に取り組んでもらえる環境を作るのも大切な仕事です。

もちろん、お客様にとって何が便利なのかを常に意識するのも重要ですが、ユーザー目線を忘れてすぐ追加機能を入れるようなマインドでは成長機会を失います。

— ありがとうございます。今日のお二人のお話しから「プロダクトとプロモーションを融合させる」、そして「どんな想いで使われているか、ストーリーを語ることで魅力を伝える」という施策とマインドが、プロダクトのグロース、強いてはユーザーの幸福につながると感じました。今日は熱いお話を本当にありがとうございました!!

久しぶりに訪れた丹野氏を迎え、カジュアルでポップな雰囲気のサイボウズ本社は一気に「おかえりなさい!」ムードに。

プロダクトとプロモーションを融合させ、誰のための利便性なのか、どんな思いで使われるのかというマインドを持ち、地道にPDCAを繰り返す。

「良いもの」だけの「ものづくり」から「顧客に愛されるプロダクト」を育てる「ものづくり」へ。この変革に遅れた者から脱落していく。

日本の「ものづくり」が輝きを取り戻すために、プロダクトマネージャーという役割とそのマインドは重要性を増している。

丹野氏と Kaizen Platform CEO須藤がプロダクトマネージャーを語るトークセッション記事