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機能や価格帯ではなく、まずはプロダクトの勝ち方を議論すべき。スドケンとビズリーチ丹野氏が「プロダクトマネージャー」を語る(前編)

前編1
2015年10月9日、渋谷のビズリーチ本社にてKaizen Platform 共同創業者兼CEO スドケンこと須藤憲司が、ビズリーチ・サービス企画本部本部長 丹野瑞紀氏とトークセッションを行いました。

テーマは「プロダクトマネージャー」。日本ではあまり知名度がない言葉ですが、マーケティングを広範囲に及び管理する役職のことを指し、海外のwebサービス企業では重要なポジションとして確立されています。

ビズリーチの現役プロダクトマネージャー丹野氏と、KAIZEN PLATFORMを世に出しwebサービスをリードするスドケンが、「どうすればWebサービスの事業成長を牽引するプロダクトマネージャーになれるのか」、徹底討論しました。

自分の主観なしに仮説は出てこない。リサーチしても意味ない

司会:トークセッションの方に進めさせていただきます。皆さんお申し込み時に色々思われていることを書き込んでいただいたと思うんですけど、それを取り上げながらお話を進めていきたいという風に考えております。

プロダクトマネジメントやサービスづくりの仕事で困っていること・課題に思っていることを教えて下さい。ということで、非常にたくさんの課題が挙がっておりますので、今日は丹野さんと弊社須藤の方でそれぞれの課題に対してお答えしたいと考えております。

それではよろしくお願いします。

丹野瑞紀氏(以下、丹野):非常にたくさんのコメントを書いていただきました。一番多かったのが「優先順位の付け方どうするんですか」というところとか。後はステークホルダーとかチームマネジメント、役割分担とかメンバー・人間関係のコメントも多かったですね。

前編4

後は「コンセプトメイキングの仕方」や「プロダクトマネージャー(以下、PM)をどうやって育成していくのか」、「ビジネスモデルはどうやって作っていくのか」とか。みなさん大体お悩みになってるポイントって同じなんだなと感じた次第です。

一番目にピックアップさせていただくのが、「サービスを改善するときの判断軸として、自分の主観で行う部分とリサーチをかけて行う部分の分け方が明確にできていません。どのような判断軸をもって改善を行うべきか教えてもらいたいです」というご質問でした。

須藤憲司(以下、須藤):これは、ご質問された方に背景を教えてもらうともうちょっといい回答ができるんじゃないかと思うんですけど。今日、この質問をされた方っていらっしゃってます?……いらっしゃっていないと。

僕はこの質問については、この方けっこう迷ってるよねとすごく思います。

リサーチをしようが、自分の主観がないとリサーチしても意味ないと思うんですよね。仮説とか自分がどうしていきたいとか意志を持ってないとリサーチをしてもそもそも出てこない。そのリサーチも定量とか定性とかそもそも仮説がないと。

何も仮説がないリサーチから見えてくるかっていうと、僕見えてきたことが一回もないんですね。なので、判断軸を持ってと言うよりも主観を持ってそれを軸にすえてやっていったらいいんじゃないかと。丹野さん、どう思います?

丹野:私も須藤さんとまったく同じで、自分の主観なしには仮説って出てこないと思うんです。

自分の主観でもって、自分が1ユーザーだったらどう思うかといったところから仮説を導き出してそこをリサーチで検証していく、裏付けを取っていくっていうのがいいんじゃないかと思います。なので、主観とリサーチ両方必要なんじゃないかなと。

理想形はエンジニアリングも企画も、両方とも動かす

前編5
須藤:ありがとうございます。では次の質問に行きましょうか。

司会:次は2つの質問を同時に紹介しますね「まず1番、現状弊社では営業や企画と技術・システム間の調整が仕事のメインで、板挟みになる構図になっています。これって平常でしょうか」。

「次に2番。マーケティングではマーケッターに劣る。システム構築ではエンジニアに劣る。デザインではデザイナーに劣る。そんな人材のイメージを持ってしまいます。良く言えばドラクエの勇者。PMにしかできない能力とはなんでしょうか?」ということです。

須藤:あるあるですよね〜、PMのキャリアの積み方っていろんなパターンがあるんじゃないかと思うんです。大きく言うと、ビジネスとか営業からPMになっていく人とエンジニア畑からPMになっていく人が多いんじゃないかと。

この場合は、どっちでもいいのでどっちかを把握しに行くのがいいんじゃないかと率直に思いました。営業とか企画を理解できるんだったらそっちに行けばいいし、エンジニアのことを理解できるんだったらそっち行けばいい。

板挟まれるんじゃなくて、少なくともどっちかは押さえられるようにしておく。それで、得意じゃない方に対してどうやって対応するかっていうのがやり方じゃないかと思うんです。

もっと言うと、理想形は両方とも動かすということです。良いパスをだして営業や企画を走らせ、良いテーマを投げてエンジニア側を燃えさせるっていうのが、良いPMの仕事だと思います。丹野さん達のところはどうですか?

丹野:自分も板挟みになってるなとしみじみ感じてしまいました。

PMは確かに板挟みになりやすくて、営業・企画・技術だけじゃなくて、マーケとか本部とか色々なところとやり取りしながら進めていくと思います。

確かに自分も振り返ってみると、自分の一番得意なところに軸足を置いて、そこを足場にしてほかの部門と調整をしていくって言うのが確かに多いと感じました。

なので、ある程度は板挟みになるので、「平常でしょうか?」という質問には「平常です」と私はお答えしたいと思います(笑)。

プロダクトマネージャーは、BTCが分からないとできない

丹野:2番目の質問はすごく面白い質問でマーケティングではマーケッターに劣る。システム構築ではエンジニアに劣る。デザインではデザイナーに劣ると。これはまさしく僕だなと思いまして。

ただ、それでいいのかなとも思います。要はディレクションする立場なので、マーケターともエンジニアともデザイナーとも言葉が通じないといけない。

すべて50点、60点で良いと思うんです。50点、60点なんだけどなんとなくできる、なんとなくその世界の仕組みが分かるって言うのがPMにとっては逆に強みになるんじゃないかと思ってます。

そうして固有のスキルを考えたときに、必ず必要になるのはファシリテーションのスキルになると思います。板挟みになると同じなんですけど、色々な人がいる中で、うまくファシリテーションして一つの解を導いていく。

あるいは必ずしもPMが解を持っているケースばかりではないので、解を持っている部門や解を持っているユーザーから上手く解を導き出す、ファシリテーションの力が必要になると思います。

須藤:去年IVSっていうイベントでPARTYの中村さんやtakramの田川さん、WHILLの林さんと対談をやった時に、すごい面白い話があった。

プロダクトが何を生み出しているって、顧客体験が求められる時代にPMに求められることは3つだと。ビジネスが分かってテクノロジーが分かって、デザインが分かることだという風に言ったんですね。そんな奴いますか(笑)? 難しくないですか(笑)? みたいな話をしたんですけど。

ただ、顧客体験を生み出すことのすべてをPMはできないときついよねと。さっきの話に戻るんですけど、営業畑から上がってきた人もエンジニアリング分からないとそもそもけっこうきついよね、とか。

さらにいうと最近はデザイン、クリエイティブが分からないといけないダメなので、B(ビジネス)T(テクノロジー)C(クリエイティブ)が分からないときついと。なのでローテさせていくのが良いんだという話になったんですけど。

それ確かにあるなと思ってて、顧客体験を生み出すためのスキルセットをちょっとずつつけていけばいいんだと考えていく。だからドラクエの勇者に例えるとすると、早くレベルを上げてロトの武器をつけろ、と。これしかないんじゃないか。

逆に言うとそれをクロスオーバーでできる人材は少ないので、存在そのものがレアになりますよね。それで、先ほどの営業企画、エンジニア、デザイナー、マーケターと会話をしていく。会話をしていってUXを追求していくのが出来るようになる。

逆に言うとそれに向けて能力を磨いていく。ファシリテーションもそうですし、会話のとっかかりとか、顧客体験を作り出すことに情熱を燃やすとか、プロダクトを愛するとかそういうことじゃないかなと思いますけど。

丹野:ちなみに須藤さんの出自は?

須藤:僕はマーケターですね。僕はもともとマーケターで営業はやったことなくて、開発はプロダクトマネージメントやるようになって一緒にやるようになった。だから最初は言ってることが全然わからないのでシステム開発の本を読みまくりました。分かってくると、「なるほどね」となる。

ちなみにさっきの「怒らせる言葉」(セッション1部で丹野氏がが紹介した、『エンジニアを怒らせる5つのコツ』)、僕は全部言ったことあるので、「そうか」と(笑)。「だから怒ってたんだな」みたいな(笑)。

丹野:今日いらっしゃっている皆さんはどちらのパターンが多いですか?

(エンジニア、営業、マーケティング系、会場にそれぞれ挙手を求める)

丹野:意外に、営業からPMになられてる方が多いんですね。

須藤:ちなみにデザイナーからPMになった方っていらっしゃいますか?……少しいらっしゃいますね。BTCを回していくのが良いと今活躍している第一線の方が言っていたので、僕は今デザインの本いっぱい読んでいるんですけど、全然身についてないです(笑)。

丹野:でも身につかなくてもいいんですよね?

須藤:そうです。会話できればいい。

「世の中が競合の製品だけだったら誰が困るんだろう?」と思考し、困らないなら商品自体を見直すべき

前編3

丹野:はい。では次行きましょうか。

司会:(悩みは)経営陣が競合に勝つことを優先事項として考えておりターゲットのイメージやビジョンを熟考することがないがしろにされてしまっていることです。

丹野:これは、質問された方いらっしゃいますか。……では、ちょっと背景をお願いします。

質問者:はい。まだ始まったばかりのサービスをやっていまして、後発のサービスなので機能面で同じサービスに並ぶって言うのを目標にしています。逆にそこから先が見えていないので、開発としても不安が残りつつとりあえず表を書いているっていう状況です。このままでこのプロダクトはいいのかなと。

須藤:ありがとうございます。競合に勝つのは、別に勝った方がいいんじゃないかと思うんですけど、問題は勝ち方だと思うんですよね。どうやって上がって勝っていくかって議論をされていないのが課題だと。

機能が全部揃うと競合に勝てるんだったら、それやったらいいと思うんですけど、たいていの場合はそういうことじゃないですよね、きっと。

すごい芯食ったキラーファンクションみたいなのがあって、それが最初のカスタマーを呼んできて、伸びていって。要はカスタマーにとって大事なところを1番、2番、3番と押さえれば勝っていくって感じなので、勝ち方を議論するのがいいんじゃないかなっていうのが僕の意見です。

丹野:徹底的にパクる、TTPっていうのはどうなんでしょうね。

須藤:TTPはやってもいいと思うんですが、僕の過去の経験だとパクってもあまり意味がない。これさえあれば何とかなるだろうと思ってやってるけど、対してなんともならないというのが過去の経験なんですね。丹野さんはどうですか?

丹野:競合は参考にします。競合の製品を実際に使ってみてそこから気づきを得るっていうのもあります。でも徹底的にパクろうとしても、意外と徹底的にパクれないものなんですね。表面的に真似てるだけになることがあるので。

競合をただ追いかけるだけだと、その製品を選ぶ必要がなくなってしまいます。勝ち筋としては悪いんだろうなとは思いますね。

なので自社の製品がなくて競合の製品だけだったら誰が困るんだろうかということを投げかけて、「誰も困りませんね」ということだったら、ほかの製品作った方がいいのかなとは思いますね。

須藤:なので、『ブルーオーシャン戦略』とかを、「読んだ方がいいですよ」と経営陣に渡すとかいいんじゃないでしょうか。……では次行きますか。

事業責任負ってないPMを、PMと呼んでいいのか?

質問者:事業責任者のもとで小さいチームのマネジメントをやっているのですが、PMは事業責任も負った方がいいのでしょうか。今の自分はプロダクトを良くするミッションといくつかのKPI目標はあるものの、お金に関することはほとんどわからないため、そちらの方も勉強した方がいいのかと悩んでいます。

丹野:そうですね。事業責任も負った方がいいんじゃないかと思います。

与えられたミッションとKPIだけで本当に課題を解決できるのかと言うと、KPI設定やミッションが本当に正しければいいのですが、PMはその前提を疑うことでブレークスルーを生み出していく人間だと思います。なので、当然事業責任や売り上げ構造も把握したうえで、プロダクトを開発していく必要があるんじゃないかなと。

須藤:僕は事業責任負ってないのにPMと言っていいのかという風に思っています。

要はPMの成果って何ですかって言ったら、そのプロダクトにまつわるPLでしょう、「結果的に売り上げが伸びている」「コストが下がっている」「ユーザー数が増えている」といったことで評価されるものだと思っています。逆に言うと、それをレバレッジするためのすべてだと思うんですね。PMがミッションとKPIを作ってないと結構きついよなと思うんです。

要は与えられたミッションの中で「やって」と言われると、できることはすごく限られますし、コストとか予算のお金もある程度わかってないとできることが少ないんですよね。プロダクトをマネジメントしていこうとすると、それは必須なんじゃないかなと単純に思いますね。

丹野:そうですね。もしそのプロダクトのPMの一人であれば、売上責任、事業責任まで見て行く必要があると思いますけど。

何人かメンバーがいて育成しながらマネジメントしていくということであれば、メンバーには事業責任まで負わせてしまうというか、ほかのメンバーにはKPIをきちんとブレークダウンしてそこに向けて走ってもらう方が、もしかしたらいいのかもしれませんね。

●後編を読む → 周りから嫌われて当たり前の世界。”しつこさ”が無ければ問題は解決しない